高次脳機能障害者と成年後見制度
厚生労働省が2001年から5年間「高次脳機能障害支援モデル事業」を全国のリハビリテーションセンター等で実施し、診断基準、訓練や社会復帰の支援プログラムなどを作成しました。
18歳から65歳未満の424例を対象として、男性が77.6%、女性は22.4%、原因別では外傷性脳損傷が76.2%、脳血管障害が17.0%、低酸素脳症が2.8%等でした。交通事故などによる脳外傷が多いため、発症時の年齢は20歳代が34.7%、10歳代が25.5%で、20歳代までに発症した人が63.2%と3分の2を占めていました。
脳外傷による若い高次脳機能障害者の場合には、復学が就労支援をはじめ、長い人生を送るにあたり、そのライフステージに応じた支援が求められます。したがって、身上監護を中心に長期に渡る支援が求められる一方で、交通事故に起因する場合には、多額の賠償金が支払われることも多く、その財産管理も成年後見制度の役割の一つになります。
成年後見制度が果たすべき役割は、賠償金などの財産管理に留まらず、自己決定を尊重し残存能力を活用しながらの、ライフステージに応じた本人への身上監護と、地域での支援ネットワーク構築になります。
治癒を期待するから後遺障害を持つ障害者への移行
本人や家族は、救命された喜びをかみしめる間もなく、転院、リハビリ、退院、通院と状況の変化に戸惑いながら、かつての家族の姿とは違うことを感じつつも、いつかきっと元に戻る期待か邁進しますが、やがていかんともしがたい現実の後遺障害としての高次脳機能障害者として直面します。
本来ならば、医療から福祉へつなぐシステムが必要とされますが、医療機関に掛った本人が、適切な時期に適切なリハビリを受けることができ、同時に福祉制度や成年後見制度に関する情報も提供され、一定の指標が示されたうえで、社会復帰への過程を段階的に進めることが求められるべきです。
高次脳機能障害の後遺障害は、100人100様で多様な支援が必要です。住み慣れた地域で暮らして生きていくためには、地域との係わりが大切になります。
日常生活自立支援事業
平成18年より、障害者自立支援法が施行され、高次脳機能障害を含む障害者の支援はこの法律に基づいてなされることになりました。
平成12年より始まった厚生労働省の高次脳機能障害支援モデル事業は、障害者自立支援法の施行に伴い終了し、この成果が引き継がれることになりました。厚生労働省では、平成18年度より「高次脳機能障害支援普及事業」を実施しており、障害者自立支援法に基づいて市町村および都道府県が実施する地域生活支援事業の中で、都道府県が実施する専門支援の一環として行われています。この事業では、支援拠点機関を設置し、1.相談支援コディネーターによる高次脳機能障害に対する専門的な相談支援、2.関係機関との地域ネットワークの充実、3.高次脳機能障害の支援手法等に関する研究の普及を行っています。平成19年3月現在で、16都道府県に支援拠点期間が設置されています。
日本成年後見法学会・2006年度報告書
社団法人日本損害保険協会よりの委託を受けて、高次脳機能障害に関する研究委員会が、2004年度より3年間、交通事故などで高次脳機障害となった人々に対し、高次脳機能障害の家族会等へのヒヤリング・アンケート等を実施し、高次脳機能障害の認定、賠償金受領の適正化、補助類型の利用促進、親亡き後の支援、費用負担への援助、市民後見人等の養成などの課題が明らかになり、その課題への対応を中心し、委員の実践や体験を踏まえて、成年後見制度を活用した支援の在り方について検討し、それをまとめた報告書です。
それぞれの課題別の提言は、高次脳機能障害の認定については医師や社会福祉士の委員が担当し、賠償金受領の適正化は弁護士が、補助類型の活用は行政書士の委員が、市民後見人等の養成を司法書士が、最後に親亡き後語の地域生活支援を大学教授が担当しています。
支援の和が広がり、共感も得られる家族会
当事者団体や家族の会に相談してみると、同じ様な経験をしてきた家族の集まりですので、情報が共有でき、共感を持って向き合ってくれる機会を得ることができます。
各地の脳外傷友の会などの当事者団体では、さまざまな活動を行っています。学習会を開いたり、会報を発行したり、様々な情報交換を通して医療の受け方、リハビリテーションの方法、福祉制度の使い方等を学ぶことができます。


