交通事故の後遺症、神経症状むち打ち症と後遺障害認定基準

見えにくい障害としての「むち打ち症」

いわゆる「むち打ち(損傷)症」が他の外傷などから比べて問題が多いのは、ひとつに客観的な所見(他覚所見)が乏しいことによるものと考えられます。第三者からは、症状の信憑性や治り具合の判断がつけにくいし、被害者にしてみれば誰からも理解してもらえないもどかしさ(焦燥感)などで、他の因子も介在し症状を増幅することもあるからです。

「むち打ち症」の大半を占める「頚部捻挫型」は、本来慢性化しない性格のものされています。急性期に適切な治療を受ければ、そのほとんどが3ヶ月以内に治癒するというデータが出ています。


むち打ち症に対する誤解のひとつに「後になって症状(後遺症)が出るので怖い」などというのがあります。医師の中にもそのように言う人もいますが、受傷後相当期間たっての症状発現は、医学的に考えられず、他の事故以外の原因を疑うのが合理的だと思われます。

外傷は、受傷直後に症状が現れるのが特徴であり、それはせいぜい3日位までで、受傷後長期間を経て頑固な症状が出ることはありえません。バレリュー症状が2〜3週間で現れることはあっても、受傷直後に無症状であることはありえません。 損傷が大きいほど直後に症状を発するもので、症状発現までに時間がかかればそれだけ「軽症」と考えれれます。

むち打ち症で治療が長期化(6か月以上の治療)した場合は、治療効果が余り期待できなくなった時点で「症状固定」といって賠償上の治療範囲を被害者との間で話し合って設定することになります。

その時点で残っている症状を「後遺症(後遺障害)」として、医師の診断書や本人の直接面接をもとに、相手方の任意保険会社を通じて、自賠責保険によるその等級認定申請を行うことになります。


「むち打ち症」の認定基準

自賠責保険における後遺障害の等級認定は、原則として労働者災害補償保険(労災)における障害等級認定基準に準じて行われています。

部   位

傷害が含まれる等級

神経障害(むちうち症を含む)・精神障害

1級1(要介護1)2級2(要介護)3級35級27級49級1012級1314級9

「局部の神経症状」

実務上の「むち打ち症」

12級13号

局部にがん固な神経症状を残すもの,労働には差し支えないが、医学的に証明できる神経症状をいう。知覚障害、局部のしびれ感、麻痺があるとき、それがレントゲン写真・CT写真・脳波検査・脳血管写・気脳写・筋電図等の検査によって証明される場合。

14級9号

局部に神経症状を残すもの 労働には通常差し支えないが、医学的に説明可能な神経系統又は精神の障害を残す所見があるもの。医学的に証明されないものであっても、受傷時の態様や治療の経過からその訴えが一応説明つくものであり、賠償性神経症や故意に誇張された訴えではないと判断されるもの。
医学的に証明しうる精神神経学的症状は明らかではないが、頭痛、めまい、疲労感などの自覚症状が単なる故意の誇張ではないと医学的に推定されるもの。


自賠責後遺障害等級認定のポイント

傷病名が、頸椎捻挫・腰椎捻挫・頸腰部捻挫等の場合は、レントゲン写真・CT写真・脳波検査・脳血管写・気脳写・筋電図等の検査によって証明されにくい医学的に証明できる神経症状に該当せず12級としては厳しいのが実情です。では「医学的に説明できる」14級では、その認定のポイントは「神経系統の障害が医学的に推定できるもの」になります。

実務上から14級認定のポイントは下記4つになると思われます・

・受傷状況の確認

・残存する症状の具体的内容及び程度の確認

・受傷状況・症状経過と残存する症状の整合性の確認

・残存する症状、特に自覚症状と検査所見との整合性の確認

これらを医証により説明できる事が14級認定の要件になると思われます。被害者請求の際に添付する「後遺障害診断書」やその他の所見にて立証できるか否かが認定のポイントになります。


被害者の方がなすべき事

ご自身が受傷した傷病を理解して、神経学的に自覚症状が説明できる事

頸椎・腰椎捻挫の場合は、一般的に整形外科の医師が診断し診察しています。整形医学の統計では受傷後3か月で治癒するというデータがあります。また、損害賠償上では、頸椎捻挫の方の70%が3か月以内に示談に応じている実態があります。

後遺障害認定においても、事前認定における初回の後遺障害診断書による非該当の割合が非常に高くなっている傾向にあります。仮に12級の要件を満たしていても14級と判断し、その後異議申立てで12級を付与するケースが増えています。

足くびを捻挫した場合には、通常4週間程度で完治します。では頸椎や腰椎捻挫という傷病では治療が長期化し後遺症がなぜ残存するのでしょうか?

長期化する理由は、医学上も特定されていませんし体系化もされていません。主治医が経験則で判断している傾向もあります。私たちには看板で病院を選択する事は可能ですが、スキルや実績から医師を特定することは困難です。いわんや柔道整復師(整骨院・接骨院)は単なる治療法としての医療類似行為です。

医学的にどういう説明がなされるのかを聞き、それを所見として診断書等に記載してもらう為には、被害者の方が基本的な医学的知識を持つ事が大切です。「むち打ち損傷ハンドブック 第2版」・「最新腰痛症ハンドブック」 出版社: シュプリンガー・ジャパンなどを読んで頂き、自覚症状と医学上の見解を調べて見て下さい。これらの少しづつの手間の積み上げが等級認定へつながります。

後遺障害等級の認定手続きや認定結果が非該当だった方は、「等級認定の請求手続」にてご確認ください


「むち打ち症」の症状

「むち打ち症」の症状には個人差があり、事故状況、被害者の体質・年齢などによっても違ってきます。事故直後は、脳震盪の症状として短時間の意識障害を起こすことがあります。

また、重症の場合は、脊髄の周りの腫れや内出血により手足が麻痺したり失禁したりすることがありますが、その場合、進行の状況によっては手術の必要も考えられます。それ以外については、症状を大別すると次のようになります。

頚部の捻挫を主とする症状

頚部の筋肉や靭帯、関節包の損傷によるものです。脊髄に損傷がなく、強い自律神経失調症状やはっきりした神経根症状もみられない、主として頭痛、頚部の疼痛、頚項部筋肉の圧痛、頚部の運動運動制限を中心としたものです。

神経根の障害を主とする症状

神経根に腫れや引き抜き損傷がおこると、それを支配しているところの領域に症状がでます。上位頚椎の場合は大後頭神経支配領域の放散痛及び神経の圧痛、下位の場合は首から肩、腕にかけての放散痛、しびれ感、上肢の筋力低下、筋萎縮、運動及び知覚障害などが起こります。

ジャクソンテスト、スパーリングテストなどと呼ばれる神経学的検査によって、他覚(客観的)所見や皮膚の知覚部位と一致する障害、腱反射の異常などで診断されます。

「神経根症状型」

脊髄の運動神経と知覚神経が集まっているところを「神経根」と呼びます。 この神経根の周りに腫れが起こったり、引抜きのような損傷が起こると、それぞれの神経がコントロールしている部位に症状があらわれます。 神経学的検査などにより、他覚的所見が認められます。

自律神経の障害を主とする症状

椎骨脳底動脈の血行不全により、その支配下の視床下部、脳幹部の血流減少により、首や肩の症状は強くなく、「頭痛、頭重、眼精疲労、耳鳴り、難聴、めまい、、声のかすれ、記憶や集中力の低下」内臓の症状として「食欲減退、消化不良、吐き気」などの胃腸障害がみられます。


後遺障害等級認定のポイントは、自覚症状が画像所見や頸・腰部神経症状の異常所見で証明できること、神経学的な所見が重要になることです。


「むち打ち症」の診断分類

「外傷性頚部症候群」あるいは、軽いものでは「頚部捻挫」という診断名になります。ご自分の傷病を確認する事も大切な事です。

「むち打ち症」とは、その起こり方をさすものですが、その病態から一般的には次のように分けられています(後になるほど重症)。

「頚椎捻挫型」

むち打ち症の中で最も多く、70%を占めるといわれています。頚椎の骨と骨の間にある関節包や骨の周囲にある靭帯などが損傷されたものです。

足首などを捻挫した時に内出血が見られるが、それと同じ様なことが首の周りに起こっていると見なされるもの(推定診断)です。

「バレー・リュー症候群型」

後頚部交感神経の刺激症状として、内耳の症状や目の症状、心臓の症状、咽喉頭部の症状などを呈するが、耳鼻科、眼科、内科などの他覚的(客観的)所見は乏しく、自覚的愁訴が主となります。

「神経根症状型」

脊髄の運動神経と知覚神経が集まっているところを「神経根」と呼びます。 この神経根の周りに腫れが起こったり、引抜きのような損傷が起こると、それぞれの神経がコントロールしている部位に症状があらわれます。 神経学的検査などにより、他覚的所見が認められます。

「低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)」

最近提唱され始めた見解で病態はまだよく解明されていません。

脳脊髄液 が減少することで頚部痛、慢性的な頭痛、嘔気、めまい、倦怠、視力障害、思考力や記憶力低下など様々な症状が出現するというもので、軽微な事故の原因不明なものにはこの症例が含まれているのではないかと言われています。最近では文部科学省が髄液漏れの存在について、幼稚園から大学までの学校現場に広く周知することを決めています。


後遺障害等級として認定されることは、一般的には難しいと言われていますが?

「むち打ち症」から来る様々な症状は、それを裏付ける他覚的異常所見に乏しい面もあり、また、数値的に表されるものでもない為、一般的に難しいと思われているのではないでしょうか。しかし、後遺障害等級認定手続きには、異議申し立て手続きが認められています。

事前認定にて「非該当」であった方が異議申し立てをするにもそのポイントがあると思います。認定されなかった理由、被害者が訴えている症状を一つ一つ精査し、的を射た立証資料を添付し異議申し立てをすることにより、適正に評価・認定されることはよくあることです。

異議申し立てには客観的な事実証明の立証を書類にするとう積み重ねが大事ということです。後遺症・後遺障害の「等級認定の異議申立て」もご確認下さい。


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